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「今にも新生し始める日本」を考える

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   混迷を深め、沈みゆくこの国に、我々ができることはなにか
~ 経済現象、社会現象として、いま皆が新生に動き始めてもおかしくはない ~

老若男女、皆の脳みそが考え、選択することになる。

                 日本都市学会2010-10-24発表

社会現象・経済現象として、今にも新生し始める日本を考える

~~ 長期に続くグローバル化と少子高齢化・人口減少時代の地方都市 今後20年を見通す ~~


1 概要
  
2 はじめに 
  ビジョンがほしい・今から20年後の2030年とは・切り替わらない古  い脳みそ

3 中核都市の時代
3-1 中核都市への企業や人の移動と周辺市町村の統廃合
3-2 持続可能性の高い都市とは
3-3 では、なぜ中核都市に集約されていくのか・動くか団塊高齢者
3-4 定住自立圏構想は単なる延命策

4 選挙される都市、足による投票の時代来る
4-1 未経験の流動化時代の到来
4-2 緊迫する世界情勢は、足による投票を促進する

5 将来像の構築と理念の国民的共有


1 概要
地球温暖化、化石資源の枯渇、世界人口100億人、高度情報化、グローバル化などが世界に及ぼす影響は、不穏な時代の到来を意味するといえよう。それゆえ、2100年の我が国の総人口が国立社会保障 人口問題研究所 超長期参考推計人口の4800万人より相当少ないのではないか。そして、その後も人口減少が続く可能性がある。
そのような視点から、2030年を中心に日本の地方都市の将来を推測  してみた。

本論は、国や自治体の政策といったものではなく、長期に続くグローバル化や少子高齢化・人口減少の影響で引き起こされる社会現象・経済現象を動因として、国土の再編や様々な改革が行われる可能性を指摘する。

第一段階 中核都市の時代(2030年頃まで)
今後数年して、地方中核都市(圏)に向けて周辺市町村から人や企業の移動が始り、結果として周辺自治体が統廃合をしながら閉じていく。中核都市は、それにより規模や熟度を上げる。

第二段階 足による投票(選挙される都市)の時代(2050頃までか)
その頃の企業も人も、土地への定着性を減じ、移動性(モビリティ)を高める時代が到来すると予想される。足による投票行動が本格化し、長期に展開されるアメリカの大統領選挙キャンペーンのような選挙戦を経て、永続都市が立ち現われてくる。

足による投票は、投票に晒される都市とその構成員である企業や大学等も評価の対象となるわけで、それぞれが特段の時代対応を強いられることになる。その結果として、政治・経済・社会と、閉塞感厳しい我が国の時代対応が図られる。

現在は、歴史的な時代の転換期というのに、我々は何の展望も持てず、先の見えない閉塞感の中にある。新しい時代に向けて改革を必要としながら、真の改革が今の我々にできると考える日本人は多分いない。しかし私たち日本人をして、未だ時間は要するが、足元から頭の先まで変えるような改革の波が、社会・経済現象として見えるところまで押し寄せてきたといえる。我々は、当面の対応と改革の大波を美しく乗りこなす準備を行う方がいいだろう。まずはビッグピクチャーを描くところから。

2 はじめに 
失われた20年、トンネルを出たらそこはグローバル化、少子高齢化人口減少社会
 ジャパン・アズ・ナンバーワンなどといわれ、世界に冠たる成功モデルと見なされた経済大国日本は、バブルの崩壊に始まる1990年代の「失われた10年」、そしていわれる「失われた20年」を経て、現在はまったく異質な時代に突入し、政治経済・国民生活とも萎縮の極みにある。

その主な要因として、経済面ではグローバル化、社会面では少子高齢・人口減少社会を挙げたい。
外需型企業は、遅ればせながらグローバル対応に舵を切り、バスに乗り遅れまいと新興国シフトを強め、内需型企業も大手はグローバルな展開を始め、国内の再編・空洞化も明らかになってきた。まだ日本は、グローバル化前期の先陣争いと試行錯誤段階であり、内需型産業等も含め、今後も企業のグローバル展開がいっそう進んでいくと思われる。

上記の他にも、国内外の大きな変動要因としては、高度情報化、地球温暖化、化石資源の枯渇、世界人口の増大等がある。失われた20年のトンネルを出ると、このように世界は、日本は一変していた。

ビジョンがほしい
我が国の将来を予測することはそれほど楽ではないかもしれない。しかし、将来像を構築できない、あるいは、構築しないために、国も企業・国民も一段と先の見えない閉塞感に陥り、その結果が政治経済・国民的思考停止となり、デフレやジャパンパッシング、少子化等々、負のスパイラルとなって現れている。
 政府・大学・専門家・本学会を始めとする専門機関、マスコミ、言論界の奮起を期待したい。

 今から20年後の2030年とは
 以下は、発表者自身が将来に向けた拠り所を欲して、今後20年の地方都市の動きを中心に考えていることの一部である。
なお、20年後の2030年というのは、団塊世代が80歳の大台を超え、団塊ジュニアが60歳を迎える高齢化社会ど真ん中時代である。生産年齢人口は15年前から、総人口は5年前から減少期に入っている。2010年現在、私たちの脳みそ世界はまだ、以前の人口増、右肩上がり経済社会の余韻の中にあり、少子高齢化人口減少社会・グローバル化社会を真正面から捉えることができずにもがいている。

切り替わらない古い脳みそ
今月14日の日経一面には、「若年層収入、女性が上回る‥製造業不振、医療・介護などの伸びが背景」と出ていた。男性比率の高い製造業で雇用や賃金に調整圧力がかかる一方、女性が多く働く医療・介護などの分野は就業機会も給与水準も上向きという産業構造の変化が背景にある」と書いてあった。このような現実の変化を繰り返し突きつけられるなか、従来の脳みそ世界はひるみはするが、また元に戻ってしまう。今の小学生が中核世代となっている2030年頃には、世代交代も進み、2050年あるいはその後に向けた時代潮流、言葉上は相も変らないが少子高齢化人口減少社会とグローバル化を率直に読みこんだ政治・経済・社会になっているだろう。

3 中核都市の時代
3-1 中核都市への企業や人の移動と周辺市町村の統廃合
我が国は、今世紀末の総人口が4800万人(▴40%)ともいわれる、人類史上経験のない急速な人口減少時代に突入した。しかしこの数値は、先に述べたように地球規模の不穏な21世紀が始まりつつあると考えると、もっと下ぶれすると思われる。この人口減少と、グローバル化による産業の再編等の大きな圧力を考えると、筆者は相当早い時点で地方中核都市に向けた企業や人の移動、結果として周辺市町村の統廃合が進むと考えるようになった。

3-2 持続可能性の高い都市とは
 都市の経済は、域内で経済が回る内需型産業と、域外からお金をもたらす外需型産業で構成されている。外部から着実にお金をもたらし、外部に取りこぼさないよう、充実した域内経済でそのお金をうまく循環させる必要がある。域外からもたらされるお金の多寡と、域内でそれをどれだけうまく回せるかで人口規模が定まる。それが、大学や総合病院等のある都市を成立させる規模に達しないと、都市の完結性に欠け、持続可能性は弱い。その都市(圏)の規模は、目安として定住自立圏構想(総務省)でいう高度中心市、人口30万人と考えている。
とりあえず市町村の統廃合が進むと、それらによってより発展する比較的コンパクトな中核都市圏が、大規模農業地帯や豊かな緑の中に浮かんでいるといった状態に落ち着いていくのではないか。なお本論では、将来の都市についていうときは、このコンパクトな都市圏をイメージしている。

3-3 では、なぜ中核都市に集約されていくのか
 経済成長期には、東京一極集中が進みながらも、国の政策として工場の地方立地やインフラ整備の公共事業もあり、地域経済社会は曲がりなりにも維持されてきた。各市町村には農業をはじめとする地域に貼りついた昔からの零細企業などがそれなりに頑張り、人口もどうにか維持されてきたともいえよう。長く変わらぬ歴史のなか、人も仕事もその土地と一体となって生きてきた時代でもあったのだ。
しかし今日、我が国が獲得した高い生活水準と、少子高齢化・人口減少社会およびグローバル化の流れは、時代を全く変えてしまった。それは、市町村の存続基盤を一方的に根底から突き崩すものである。具体には以下の理由により、人も企業も中核都市に手繰り寄せられていくと思われる。
①少子高齢化・人口減少下の市町村にあって、内需型企業の淘汰再編が進む。
②外需型企業や輸送可能なモノに係る企業はグローバル競争に直面し、目に見えて
淘汰再編が進む。それぞれ、再編後の立地場所は、将来に向けた資産保全・企業存
続の観点から中核都市とその周辺に集約される。民間の福祉医療機関も、早めにシ
フトしていくことになる。
③5年、10年と目立って衰退が進む市町村には、公的サービスに対しても、住民は
頼れなくなる 。団塊の世代が後期高齢者となる前に、生活拠点を中核都市に移す流
れが起こる可能性は相当高い。
④雇用の流動化や再雇用に向けた教育の必要性の高まりは、教育研修機能の揃った
中核都市に人々を向かわせる。
⑤高度情報化は多様な生活を可能にさせつつも、都市的生活を求める人々を増やす
傾向が強い。
■自治体淘汰時計  将来の財政推計
・上下水処理場・配管/公共建物/道路等の更新時期と更新コスト・維持管理費
・高齢者・後期高齢者数と労働世代との比率
・税収と支出の見込み             ‥  破たん
  ・仮想のモデル自治体について、ストーリーを描く
・基礎データを入れれば、10,30,50年後の大枠がわかるリトマス試験紙を作る
   ・それを各自治体が公表することで、自己抑制が働くようになる。また、収束の動因となる。

動くか団塊高齢者
 中核都市に集約されていく時代の引き金を引く一番手は厳しい経済競争下の企業であろうが、二番手は、75~80歳にならんとする団塊の世代ではないか。団塊世代は、老親の面倒をみようとする最後の世代であり、子供には頼らない最初の世代である。経済成長の最先端にいた最初の都市型世代であり、合理的近代人といえるだろう。そこで、夫婦またはどちらかが一人になっても安心な生活基盤を、元気なうちに確立しておかなければならないとなると、早めに都市に移ろうとするからだ。国民経済的視点から、行政による呼び水・誘導策が求められる。

3-4 定住自立圏構想は単なる延命策
これは2035年に向けたイメージで、人口5万人以上、昼夜間人口比率1以上である地域の中心市が圏域の核となり、周辺市町村と将来に向けた相互依存の協定を結び、連携・役割分担のもと生活に必要な都市機能を確保する。日本の総人口の8割をカバーする分権型社会にふさわしい定住自立圏を形成し、東京圏への人口流出も防止する。国は積極的に支援するというものである。
しかし、同構想でいう人口5万人以上の中心市では、総人口が例えば4800万人に縮じんでいく時代にあって長期投資ができない。中長期の存続が見込めないのだ。また、社会・経済現象として起こる中核都市に向けた前述の流れを受け止めようともしていないことからしても、単なる延命策であり財源の浪費である。
持続可能に向けた中核都市の再構築とともに、限界市町村を無理せずいかに美しく閉じていくかという逆投資、そして、足による投票で明らかになってくる永続都市の育て方が、今世紀、国づくりの主要命題になるべきであろう。

4 選挙される都市、足による投票の時代来る
4-1 未経験の流動化時代の到来
企業も人も流動化する社会現象のなか、次に、企業や人々を永続都市に向かわせる「足による投票」の時代が到来する。
流動化の要因としては、①米国では一生に平均10回は仕事を変わるといわれるが、日本も数度の転職は当たり前になる。②また、企業の盛衰、業種業態変更等も活発になる。③人口減少そして市場の縮小といった経済状況では、土地建物・生産手段を保有する危険度が高いため、企業も人も資産保有は抑制し、その代わり外部サービスへの依存が増える。企業も業務を仕分けし、外部サービスの活用と同時に、自企業も外部からの受託を増やす。④土地へのこだわりの低下については、人口減少に基づく地価下落の上に、それを加速する要素として次の二つを指摘したい。まず、介護保険の導入と時代の変化による子供に頼らない老後といった考え方の変化は、親世代・子世代の双方を土地財産や郷里などに縛りつける要素を弱めること。もう一つは、小規模農業の衰退である。⑤土地建物の子供への相続と老後の介護のバーターシステムの終焉は、家を建ててもそれが相続の対象ではなくなることを意味する。ライフステージによって住み替えるとか、仕事によっては引っ越す可能性も高まるため、家屋は売買や賃貸の積極的な対象物となり、欧米の住宅市場に類似してくる(市場で扱いづらい注文住宅は減少する)。⑥男女同権、共生参画社会の到来、非婚、同棲、事実婚、少子化、離婚率の増大等々、流動化の要因は社会現象として様々に指摘できる。

このような要因により、未経験の流動化時代が到来するのである。そのため、人や企業にとって魅力的な都市でなければ足による投票に負け、都市や構成員としての企業や大学、市民等々も憂き目をみることになる。

4-2 緊迫する世界情勢は、足による投票を促進する
2030年あるいは2040年には、その頃の正確な時代認識の中、国内人口が今世紀末に4800万人、その先も減少していくと見通せば、あるいは緊迫する世界情勢から出生率がより低下するような状況から将来を考えるとなれば、永続あるいは退出する都市の見極めと資産の置き換え行動は一層促進されることになる。
また、その頃の世代や彼らが形成する企業は、現在に比べて変化対応型でモビリティが高いだろう。また、少子高齢化人口減少社会・グローバル化の永続的な展開を踏まえての、企業戦略や家族の将来設計の拠り所・投資先の決定は、早ければ早いほど有利である。

5 将来像の構築と理念の国民的共有
じつは、この日本全土に及ぶ大移動・大編成時代を前にしても、国や自治体は問題先延ばしや様々な延命策を繰り返し、将来世代にさらなる負債を積み増す可能性が高い。人口減少下にあって、無益な投資は厳に許されてはならない。そのためには、信頼に足る将来像の構築と理念の国民的共有が必要である。

 個々人や企業が折々に下す、それぞれの判断の総体が、この国を改革する大波を起こす。それを、うまく規制誘導出来るのかは、わからない。しかしこの国は、全国的に足元からダイナミックに改革されていく。
 国が、積極的に全体と関わる政策を構えたとして、うまくいくだろうか。すべきこととしては、大波が早く起きるよう、またより好ましいものとなるようにするため、①国をあげてビッグピクチャーを描き、
②国・自治体・国民的コンセンサスを形成し、
③円滑に動いていくよう雰囲気作りをする、あるいはそそのかすということであり、
あとは、国民や各種団体、自治体の自己運動に任せることが自然かと思う。
人口4800万人社会に向け、美しく縮んでいく時代を挑戦的に生きたいものだ。